新車の開発から量産までのプロセスで行われる試作の課題

2022/08/05
column

新車開発を進めていくうえでは、複数の課題を乗り越える必要があります。例えば、開発期間の短縮やコスト削減は常に課題としてあるでしょう。また、試作品と量産品の違いによって生じる問題の解決や、新車の生産準備を予定通り完了させることなどは、念頭に置いておくべき課題です。今回は、このような試作の課題について、どのような取り組みを行うと良いのかを簡単に解説します。

新車開発の試作費の削減は現実的に可能か?

近年、各自動車メーカーでは新車開発の費用が膨らむケースが少なくありません。自動運転技術の性能向上や、全世界的な脱炭素の動きに対応すべく電気や水素といったガソリン以外をエネルギー源とする、新車の開発などへの投資をする必要があるためです。このような将来への投資をしていくために、生産準備段階における試作費をできるだけ削減する努力が必要となります。
試作台数を削減すれば、コストカットは実現可能です。各自動車メーカーはさまざまな取り組みを行い、試作台数の削減に成功しています。例えば、コンピューター上のシミュレーションを活用して実証を拡大する方法(モデルベース開発/MBD)や、プラットフォームの共通化ですでに開発済の自動車の評価を転用する方法などがあります。

試作品と量産品の違いによる問題発生の防止

試作品と量産品では、使用する部品や製造工程が違います。こうした試作品と量産品との間に生じた差異が原因となり、問題が発生することも珍しくありません。試作品では品質性能に問題の無かった部品であったのに、量産品では問題が起こってしまうケースや、規格が厳しく量産化困難な部品であることが発覚するケース、などといった問題が起こり得ます。
問題発生防止のためには、試作品を作る段階で量産品になるべく近いものを目指す必要があります。その部品や製造工程で本当に量産可能なのかを検証し、もし問題点が見つかれば早期に解決しなければなりません。

計画通りに生産準備を完了させる

新車発売の2年ほど前の段階で、サプライヤーは自動車メーカーから受注して生産準備に入るというのが通常の流れです。そんな中で、金型の手配や図面の作製遅延などが原因となって、部品が新車の試作イベントに間に合わないというトラブルが起こる場合があります。ティア1サプライヤーで生産準備の遅れが発生すると、ティア1サプライヤーの調達先であるティア2、ティア3のサプライヤーは、生産準備を急いで間に合わせなければならない状況となります。
しかし、ただでさえ時間との戦いである新車開発において、さらに生産を急ぐというのは容易ではありません。こういった生産準備の前段階での遅れにより、工場での量産化に向けたトレーニングのための時間が十分に確保できず、スムーズな量産への移行が妨げられる場合があります。
このような事態を招かないよう、最初の計画通りに生産準備を完了させられるよう取り組むことが肝心です。工作機械メーカーと交渉することになる設備は、仕様決定から発注、納入までに1年以上を要することもあります。また、量産品の金型は初回で合格とはならず、ラインで生産してみて補正、修正がかかってようやく完成となることがほとんどです。
さらに、排ガス規制や衝突安全性評価、環境負荷物質など、各国の法規制やアセスメントを満たしていなければなりません。新車開発途中で法規制が改正される場合があるため、再設計となってしまったり、法律の施行まで時間との闘いになったりする可能性があります。これらのポイントを考慮した上で、新車開発にかける期間をできる限り短縮し、効率的に試作を行いましょう。

今回のまとめ

自動運転技術の性能向上や、電気や水素といったガソリン以外をエネルギー源とする新車の開発などへの投資をしていくために、生産準備段階における試作費をできるだけ削減する努力が必要となります。試作台数を削減すれば、コストカットは実現可能です。コンピューター上のシミュレーションを活用して、実証を拡大する方法(モデルベース開発/MBD)や、プラットフォームの共通化で、すでに開発済の自動車の評価を転用する方法などで試作台数を削減できます。
試作品と量産品の違いによる問題発生防止のため、試作品を作る段階で量産品になるべく近いものを目指す必要があります。その部品や製造工程で本当に量産可能なのかを検証し、もし問題点が見つかれば早期に解決することで対応しましょう。
スムーズな量産への移行のためには、最初の計画通りに生産準備を完了させられるよう取り組むことが肝心です。新車開発にかける期間をできる限り短縮し、効率的に試作を行ってください。