金属・樹脂とは大きく異なる!試作品製作でのオートクレーブ成型に隠されたメリットとは?

2022/08/08
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CFRPの成型方法の中でも高品質な完成品を成型できるオートクレーブ成型をご存じでしょうか?オートクレーブ成型は、他の成型法と比べると高い圧を均等にかけられるのが特徴です。この記事では、オートクレーブ成型の流れやメリットについて解説します。

CFRPやカーボンの成型方法であるオートクレーブ成型とは?

オートクレーブとは、内部を飽和蒸気によって高温高圧にできる耐圧性の装置や容器のことを指します。わかりやすく言うと圧力釜のようなものです。プリプレグと呼ばれるシート状のカーボンを型に合わせ、高圧下で熱硬化させる工法がオートクレーブ成型です。
CFRP(炭素繊維プラスチック)の成型方法はRTM成型。プレス成型、SMC、シートワイティング成型など様々な方法があります。製品に求められる特性に応じて最適な成型方法を選択します。オートクレーブ成型は時間がかかり製造コストも高くつきますが、設計の自由度が高いためCFRPの特徴を引き出しやすい製法です。

オートクレーブ成型では、型の設計から行います。金属から石膏型まで目的に応じて使い分け、型ができればプリプレグを貼り付けていく流れです。そのため、プリプレグを適切な大きさに裁断しなければなりません。手作業で切ることも可能ですが、寸法や裁断面の品質を考え、近年ではカッティングマシンを用いることが多くなりました。

貼り付けが終わったらシールを貼り、空気を抜きます。これを真空引きと呼びます。オートクレーブで加圧、過熱して硬化させたら型から外します。必要に応じてトリミングなどの仕上げを行い完成です。オートクレーブ成型の過程の中でポイントになるのが、型に貼り付ける積層と型から外す脱型です。

オートクレーブ成型の特徴は積層(ハンドレイアップ)と脱型

オートクレーブ成型において、成型の過程でカットしたプリプレグを貼り付けて重ねていくことを積層(ハンドレイアップ)と呼びます。積層と言っても、単純に重ねていくだけではなく、立体的な型に合わせて積み上げていく必要があり、熟練の技が必要。また、局面に合ったカッティングを工夫する必要があります。積層によって部分的に補強したり、剛性を高められたりすることがプレス成型との違いです。CFRPの特徴を活かした成型方法だと言えるでしょう。

CFRPの樹脂材料に利用されるエポキシ樹脂はくっつきやすいため、付着防止のための処理が重要です。そのため、型の表面には型から外しやすいように離型処理が行われることが多いのですが、離型剤は作業効率を低下させ、品質への影響が懸念されます。
型自体に表面処理を行うことで離型性能を高め、作業効率や品質の改善を期待できます。
このように、オートクレーブ成型においては離型への対策が重要です。力任せに外そうとすると破損の危険があるため注意しなければなりません。

オートクレーブ成型のメリット

オートクレーブ成型のメリットは品質の良さです。複合材料を成型する方法の中で、最も品質が良い優れた製法と言えるでしょう。
オートクレーブを利用するため成型の際の圧力が高く、気泡の発生を抑えられます。気泡が少ないということは、成型品の内部のボイドと呼ばれる脆弱な部分が少ないということであり、高品位な成型品が得られます。圧縮空気を利用して加圧するため、材料に対して圧が均等にかかることも高品質の要因です。
一方で、成型に時間がかかること、自動化が難しいことがデメリットとして挙げられます。大量生産が必要な部品などにはコストの面で限界があります。

今回のまとめ

オートクレーブ成型は高圧を利用した高品質な成型を行う製法です。高額な設備投資が不要な成型方法に比べると、初期コストはかかりますが、品質を考えるとそれだけの価値がある製法だと言えるでしょう。品質が良いということは強い製品とも言うことができ、航空機部品の成型にも利用されています。コスト、品質を加味して最適な成型方法を選択してください。