試作品・モックアップ製作における切削加工と粉末造形の比較

2021/09/15
column

試作品やモックアップを制作する際は、切削加工と粉末造形の技術が多く活用されます。切削加工・粉末造形を活用した製作では、どちらも3Dデータを作成した上で加工・造形を行いますが、製作工程や品質などにおいて違いがあります。
そこで今回は、試作品・モックアップ製作における切削加工と粉末造形の違いについてお伝えします。

【目次】
1.試作品・モックアップ製作における切削加工(NC切削)の概要
2.試作品・モックアップ製作における粉末造形の概要
3.切削加工(NC切削)と粉末造形の比較
4.今回のまとめ

試作品・モックアップ製作における切削加工(NC切削)の概要

試作品・モックアップ製作で多く用いられる切削加工は、材料の不要な部分を取り除いて加工する「除去加工」の一つです。樹脂や金属などの材料の塊をドリルやフライスなどの工具で削り出したり、穴あけ、ネジ切りなど様々な加工を行うことができます。切削加工は、工業製品の量産に多く用いられている加工方法で、同様の形状の物を均一の精度で大量に加工することにも適しています。
現代の切削加工では、主にNC(数値制御)プログラムを利用し、機械に取り付けられた工具や加工物の位置を自動的に動かして加工することがほとんどです。作業者の加工技術に依存せずに精密な試作品・モックアップを製作することができます。

試作品・モックアップ製作における粉末造形の概要

粉末造形とは、3Dプリンターを活用した造形方法の一つであり、材料を足しながら造形する「Additive Manufacturing(付加製造)」の一つです。粉末状の樹脂や金属などの材料をレーザーで熱し、一層ずつ硬化させて積み重ねることで造形する工法で、3Dプリンタ用の3Dデータを読み込ませて直接造形を開始することができます。
粉末造形は、複雑な構造を持つ物や組み立てなどが必要な物も迅速に造形することができます。また、デザインや形状、組み立て工程、組み立て時の隙間の確認などを行うことに適しており、製品開発の初期段階で多く用いられます。

切削加工(NC切削)と粉末造形の比較

切削加工は、材料の不要な部分を取り除いて加工する除去加工のため、加工時に切屑などの材料ロスが発生します。一方、粉末造形は材料を足しながら造形するAdditive Manufacturing(付加製造)であり、粉末状の材料を造形ステージに敷き詰めて必要な箇所だけ固めるため、サポート材が必要なく、材料ロスが少ないというメリットがあります。また、切削加工は、2Dや3Dの図面データの他に工作機械を動かすためのNCプログラムを作成する必要があるのに対し、粉末造形は、3Dデータからプログラムを作成することなく直接造形することができます。
その他、切削加工は、非常に高精度で幅広い材料を加工することができるため、実際の製品に近い量産前段階の試作品やモックアップ製作に適しています。一方、粉末造形は、切削加工ほどの精度を出すことができないため、造形後に研磨や含浸(材料の穴の隙間を埋める技術)を行って調整する必要があり、開発の初期段階における試作品やモックアップ製作に適しています。

今回のまとめ

切削加工は、材料の不要な部分を取り除いて加工する「除去加工」の一つで、同様の形状の物を均一の精度で大量に加工することにも適しています。粉末造形は、材料を足しながら造形する「Additive Manufacturing(付加製造)」の一つで、粉末状の樹脂や金属などの材料をレーザーで熱し、一層ずつ硬化させて積み重ねることで造形する工法です。
切削加工は、幅広い材料を高精度で製作することに適していますが、材料ロスが多いことやNCプログラムの作成の手間があるなどのデメリットがあります。粉末造形は、切削加工と比べて造形物の精度に劣りますが、材料ロスが少なく3Dデータから直接迅速に造形することができます。このように、切削加工と粉末造形には違いがあるため、目的に応じて選択したり、場合によっては両者の技術を合わせることで高精度かつ迅速な造形を実現することができます。