日本で発明されたプロダクト「炊飯器」のデザインについて

2022/03/28
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今や炊飯器を知らない人はいないでしょう。家庭に一般的に導入されており、誰もが当たり前のように炊飯器で炊いたご飯を食しているはずです。そんな便利な炊飯器も、実は長い歴史と進化を経て現在のデザインに至っています。また、炊飯器の先駆けともなった製品は日本で発明されたものです。いったいどんな経緯で、どのようなデザインで作られたのでしょうか?今回は、日本で発明された炊飯器のデザインを主軸に解説して参ります。ぜひ最後までご覧ください。

【目次】
1.炊飯器の歴史
2.日本で発明された炊飯器のデザイン
3.近年の炊飯器デザインの傾向
4.今回のまとめ

炊飯器の歴史

日本において、米を食べる文化は縄文時代から存在していたとされています。この時代にはすでに稲作が行われており、現代のお粥のように米を煮て食べていたようです。そして、弥生時代になると米を蒸して調理する強飯が作られるようになり、奈良時代から平安時代にかけては身分の高い人のみが白米の強飯を食すようになります。時代を経て江戸時代になると、蓋付きの釜が普及し、現在のような適量の水とともに米を炊く方法が定着したのです。
また、同年代には「始めちょろちょろ中ぱっぱ、赤子泣くとも蓋取るな」といった文言で、最初は弱火で中盤に強火にして蓋は決して取らないというご飯の美味しい炊き方も編み出されていたとされています。
その後、1924年になると初の「電気釜」が販売され、さらに時代を経るごとに改良されていき、自動炊飯・保温・圧力調理・IH式など様々な機能が追加されて現在の炊飯器に至るのです。ちなみに、現在業務用として主に利用されているガス式の炊飯器は、1902年に販売された「ガスかまど」が最初とされています。

日本で発明された炊飯器のデザイン

日本で最初に販売された炊飯器は「電気釜」「電化釜」と称されており、製品の全体的な形状は現在の炊飯器とあまり大差はありません。すでに美味しいご飯の炊き方が周知されていたことから、形状におけるデザインは最適化されていたようです。ただ、その仕組みは単にヒーターの上に釜を設置したような形で、現在のようにご飯が均一に美味しく炊き上がるものではありませんでした。
また、保温機能も存在せず、一定の温度に達することでヒーターが切れてしまうものがほとんどだったようです。このため、炊き上がりの美味しいご飯を食べるためには、常に炊飯器を見守っておく必要がありました。
しかし、1955年に販売された東京芝浦電気(現在の東芝)の「自動式電気釜」では、電源のオン・オフの自動化が実現し、これによって炊き上がりのタイミングを任意の時間に設定でき、それまで放置することができるようになったのです。なお、機能の詳細としては、バイメタル式のサーモスタットに釜内部の温度が100度以上になったことを検知させ、自動的に電源をオフにする仕組みとなっています。そして、この製品が基盤となり先駆けになる形で、炊飯器には様々な機能が追加されていきました。

近年の炊飯器デザインの傾向

近年の炊飯器のデザインとしては、多機能で高級なものが主流です。例えば、鉄・炭・土鍋を内釜の素材としていてより美味しいご飯が炊けるもの、好みに合わせて炊き具合を変えられるもの、蒸気が発生しづらいものなど様々な機能を持った製品が見られます。
なお、消費者の視点では、特に美味しく炊けるものが人気となっており、高圧力でより高火力といった機能も多く求められているようです。そのほか、近年では保温の際に、ご飯の酸化を抑制したり保湿したりして美味しさを長持ちさせる機能を持つ製品もあります。

今回のまとめ

現在でこそ多機能で便利な炊飯器が多く存在しますが、かつてはごく限られた機能を持つものでした。デザインにおいても、ヒーターを内蔵したマイコン式が主流で、現在ほど美味しいご飯が炊けるものではありませんでした。とはいえ、それらの製品が日本で発明されたことをきっかけとして、様々な炊飯器が作られ進化していったのも確かなことなのです。