試作品・モックアップ製作における「真空注型」とは

2021/08/17
column

試作品・モックアップを製作する際は、製作する物の形状や目的、予算、納期などに応じて様々な工法の中から最適な方法を検討します。数ある工法の中でも、「真空注型」は試作品製作において多く用いられ、小ロット生産においても活用されています。
そこで今回は、試作品・モックアップ製作における「真空注型」についてお伝えします。

【目次】
1.試作品・モックアップ製作における真空注型で用いられる設備と技術
2.試作品・モックアップ製作における真空注型のメリット
3.試作品・モックアップ製作における真空注型のデメリット
4.今回のまとめ

試作品・モックアップ製作における真空注型で用いられる設備と技術

試作品・モックアップ製作における真空注型は、型と材料を真空状態の容器に置いて減圧し、大気圧に戻す力を利用して材料を押し込むことによって成形する工法です。
注型する際に使用する型にはシリコンなどが使用され、材料はエポキシ系の熱硬化性樹脂やウレタン系2液性の熱硬化性樹脂が使用されます。これらの樹脂は粘性が高く、流し込むだけでは型の隅々まで行き渡らないため、真空ポンプや真空槽などの設備で減圧後大気圧に戻す注型技術を用いる必要があります。
また、現在の真空注型機械は自動化などの発展を遂げていますが、機械で全ての工程を自動的に製作する切削工程や粉末造形などの造形方法とは異なり、人の手も入れながら成形を行います。

試作品・モックアップ製作における真空注型のメリット

真空注型は、圧力の力を利用して材料を型に押し込むため、樹脂の重さによって型に樹脂を行き渡らせる「重力注型法」や、樹脂を注型口から流し込むトップゲート方式・アンダーゲート方式と比べ、気泡が発生することがなく、高い精度で迅速に造形物を作ることができます。一つの型から同じものを複数造形することができ、試作品のカラーリングの検討や予備の準備、小ロット生産を行うこともできます。
また、エポキシ系樹脂やウレタン系樹脂、シリコンゴムなどの材料を活用することにより、薄肉の試作品も細部まで忠実に造形することができます。

試作品・モックアップ製作における真空注型のデメリット

真空注型は、エポキシ系樹脂やウレタン系樹脂に限られており、材料の選択肢が狭いことがデメリットとして挙げられます。エポキシ系樹脂やウレタン系樹脂などの素材は、経年劣化により黄変するデメリットもあります。
また、真空注型は、型作りのために必要なサンプルを切削加工や粉末造形、光造形などで製作する必要があり、一つの型から大量生産を行うことには向いていません。さらに、切削加工ほどの高精度で造形することには向いておらず、複雑な形状の成形を実現するためには、精度の高い型作りを行う必要があります。

今回のまとめ

試作品・モックアップ製作における真空注型は、型と材料を真空状態の容器に置いて減圧し、大気圧に戻す力を利用して材料を押し込むことによって成形します。注型する際に使用する型にはシリコンなどが使用され、材料はエポキシ系の熱硬化性樹脂やウレタン系2液性の熱硬化性樹脂が使用されます。
真空注型は、圧力の力を利用して材料を型に押し込むため、気泡が発生することがなく、高い精度で迅速に造形物を作ることができます。一つの型から同じものを複数造形することができ、試作品のカラーリングの検討や予備の準備、小ロット生産を行うことにも適しています。しかし、真空注型は、使用できる材料の選択肢が狭いことがデメリットとして挙げられ、切削加工ほどの高精度で造形することには向いていません。