試作品・モックアップ製作における「真空成形」とは

2021/08/18
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試作品・モックアップを製作する際は、製作する目的や物の形状、デザイン、予算、個数、納期などに応じて様々な工法の中から最適な方法を検討することが大切です。数ある工法の中でも、「真空成形」は試作品製作において多く用いられ、小ロット生産においても活用されています。
そこで今回は、試作品・モックアップ製作における「真空成形」についてお伝えします。

【目次】
1.試作品・モックアップ製作における真空成形で用いられる設備と技術
2.試作品・モックアップ製作における真空成形のメリット
3.試作品・モックアップ製作における真空成形のデメリット
4.今回のまとめ

試作品・モックアップ製作における真空成形で用いられる設備と技術

試作品・モックアップ製作における真空成形とは、シート状の材料を型の形状に成形する工法のことを指します。熱することで柔らかくなるシート状の材料を型に合わせ、シートと型の間を減圧することで真空状態にし、冷却することにより成形します。真空成形の機械には、材料を保持するための装置や加熱装置、プレス装置、真空にするための装置などが備え付けられています。
真空成形で使用される素材は、ポリプロピレンやポリエチレン、アクリル、ABS、塩化ビニルなどの熱可塑性のプラスチックシートであり、製作する試作品の目的によって使い分けられます。これらの素材は、主に外装カバーや内装カバー、トレー、プラスチックケースなど、薄型形状の物の成形に適しており、試作品製作はもちろん、部品を入れておくためのケースやショーケースの製作にも多く用いられている工法です。
また、型は、凹型と凸型のどちらかを使用し、木材や人工木材、金型などが使用されます。

試作品・モックアップ製作における真空成形のメリット

真空成形は、プラスチックシートを真空状態で圧縮する工法のため、精度や強度を高めながら0.5mm〜10mmの薄型の物を製作することを得意としています。また、型を利用し、部分的な変更を行うことが容易な工法のため、同じ形状のものを複数製作しながら様々な検討を行ったり、小ロット生産を行うことにも適しています。
使用する材料によって、対薬品性や耐熱性を持たせたり、透明な材料で製作することもでき、食品用のカバーや医療機器カバーなどにも適しています。

試作品・モックアップ製作における真空成形のデメリット

真空成形で使用する型は、凹型・凸型の両方を使用する射出成形などの工法とは異なり、凹型・凸型のどちらか片側のみを使用するため、型が当たらない面の精度を高めることが難しいことがデメリットとして挙げられます。成形品の外側の精度やデザインを重要視している場合は凹型、成形物の内側の精度や肉厚の均一性を高めたい場合は凸型など、製作目的に応じて型を使い分けることが大切です。
また、真空成形は、不要な部分のトリミング(後加工)を行う必要があり、射出成形など大量生産用の工法と比べると製作に時間がかかります。

今回のまとめ

試作品・モックアップ製作における真空成形では、熱することで柔らかくなるシート状の材料を型に合わせ、シートと型の間を減圧することで真空状態にし、冷却することにより成形します。熱可塑性の材料が使用され、主に外装カバーや内装カバー、トレー、プラスチックケースなど、0.5mm〜10mm薄型形状の物を高精度かつ強度を高めながら成形することに適しています。また、型を利用し、部分的な変更を行うことが容易な工法のため、同じ形状のものを複数製作しながら様々な検討を行ったり、小ロット生産を行うことにも適しています。
しかし、真空成形は、凹型・凸型の両方を使用する射出成形などの工法とは異なり、凹型・凸型のどちらか片側のみを使用するため、型が当たらない面の精度を高めることが難しいことがデメリットとして挙げられます。