大型モックアップ製作では3Dプリンターが活用され始めています

2022/04/19
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これまでは、造形品質の面やコストの問題から大型モックアップ製作に3Dプリンターは適さないという見解が多いのが実情でした。しかし、現在では3Dプリンターの進化に伴い「3Dプリンターでなければいけない」というシチュエーションも増加しています。
今回は、大型モックアップ製作で利用されている3Dプリンターについて解説します。

かつて3Dプリンターは大型モックアップに不向きだった

これまでは、「大型モックアップ製作に3Dプリンターは向いていない」という見解が一般的でした。その理由は、造形サイズの限界です。
造形できる最大サイズは、3Dプリンターのサイズに依存するため、大型のモックアップを製作するためには、部品を分割して製作して組み立てるか、モックアップと同じサイズの3Dプリンターを導入するという方法しかありませんでした。しかもこの方法だと、パーツ結合のための下準備が必要になるうえに、精度や強度が下がってしまうというデメリットもありました。
しかし、現在では大型造形に対応した3Dプリンターが登場しており、高速で非常に精度の高い造形が可能であることから、大型モックアップ製作で利用される状況が増えつつあります。

船舶業界のモックアップ製作では3Dプリンターが利用されている

現在の船舶業界では、「温室効果ガスの半減(2050年まで)」と「海洋生物に影響を与える騒音を軽減する(プロペラキャビテーション)」という2つの目標が掲げられており、これらの研究開発では大型モックアップ製作で3Dプリンターが利用されています。
船舶の開発工程では、船舶模型を実験用プールに浮かべて検証などを行いますが、これらの工程では「複数の船舶模型」が利用されるのです。通常これらの模型は職人の手によって製作されていますが、この方法だとコスト増加はもちろん、完成までに時間が必要になってしまうため、開発に多くの時間をかけることになりかねません。
3Dプリンターを利用することで、これらのデメリットを解消できるだけでなく、あえてパーツを分割することで実験時に多くのバリエーションを検証できるようになるというメリットもあり、船舶業界のモックアップ製作では3Dプリンターが利用されています。

大型モックアップ製作における3Dプリンターの今後の可能性

現在の日本では、試作や金型などのモックアップ製作に3Dプリンターを利用することが多いですが、米国では製品に3Dプリンターを利用する企業も数多く存在します。
3Dプリンターを使うことで、「強度を保ちながら軽量化する」「特殊なデザインにする」といったことが可能になるため、これまでは実現不可能だったデザインでありながら強度を保った製品の開発が可能になりつつあります。
また、これまでは精度の問題で利用することが難しかった「僅かな形状で変化するような部品」のモックアップ製作に3Dプリンターを利用することも可能になっており、今後も製造コストや開発期間の面で活用される機会が増えていく可能性があります。

今回のまとめ

3Dプリンターの発展によって、自社独自のデザインを活かした製品作りが促進されると予測されます。また、資金の少ない中小企業でも、大手企業を圧倒するデザインと性能を備えた製品を開発できるようになるのは、そう遠くないことかもしれません。