商品開発時に自社のアイデアを守るための「特許権」と「実用新案権」の違い

2022/02/28
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商品開発において生み出された自社のアイデアが、 他社に活用されないよう保護するための権利を「知的財産権」と言い、その中に「特許権」と「実用新案権」があります。この2つの権利は、似ているように思われるのですが、実は全く異なる権利です。どのような違いがあるのか、今回の記事で正確に把握しておきましょう。

【目次】 
1.特許権と実用新案権の相違点を比較
2.特許権と実用新案権どちらが良いのか?
3.今回のまとめ

特許権と実用新案権の相違点を比較

特許権と実用新案権は、どちらも「産業財産権」と呼ばれる4権利のひとつです。新しい技術のアイデアを生み出したり、独創的な発明を行ったりした時に、申請の上与えられる権利です。
特許権は特許法、実用新案権は実用新案法と、異なる法律のもとで管理されており、明確な違いがあります。双方の相違点のうち、特に重要な点を比較してみましょう。

保護対象

特許権における保護対象は、特許法によって「自然法則を利用した、高度な技術的発明」と定められています。つまり、人為的な取り決めが含まれていると、保護対象とはなりません。実用新案権は、発明ではなく考案が保護対象であり、かつ物の形状や構造または組み合わせに関するものとされています。
また、特許のように、方法および高度性は問われません。製造方法や計測方法など方法に関する技術などは、特許としての出願が必要ですが、機械の構造については特許もしくは実用新案権のどちらでも申請が可能です。

権利行使

特許権は、出願手続きが複雑な上、審査請求手続きも必要であり、厳密な審査を通った者のみが権利を得られます。一度権利を得られると、権利が20年間保護され、期間内はいつでも特許権行使が可能です。
これに対して、実用新案権は、実質無審査で10年間の権利化が認められ、権利化までの期間も特許権より大幅に短くなっています。その分、権利を得た後でも、手続きなしで権利行使を行うことはできず、実用新案技術評価を請求し、査定で認められなければならないのです。

費用

特許の出願時にかかる費用は、出願料や、代理人に依頼する場合の費用に加えて、審査請求費用および拒絶理由通知に対する費用などがあります。実用新案権では、審査請求費用や拒絶理由通知の費用はかかりませんが、1年から3年分の出願料が必要です。これらの総額を比較すると、特許の出願費用に比べて、実用新案権の費用はおよそ6割程度となるのが一般的です。

特許権と実用新案権どちらが良いのか?

特許庁が発表している「特許出願等統計速報」によると、特許は毎月2万件から3万件出願されていますが、実用新案権は400件から500件程度と、出願件数が大きく異なります。権利行使の安定性があるため、権利が保障される特許の方が需要が多くなっていますが、実用新案権も権利化までの期間が早い・費用が安いなどのメリットで、活用している企業や個人もあるのです。
例えば、製品のカタログに実用新案取得との記載を加え、製品価値を上げ営業を有利に進めたい場合は、実用新案を申請する意義があります。また、特許を取得できる可能性は低くとも、同じようなアイデアで他社が特許を取るのを防ぐために、「防衛出願」として実用新案権の申請を行うケースもあります。どちらを行使すると良いのか迷った場合は、専門家である弁理士に相談することをおすすめします。

今回のまとめ

今回紹介したように、特許権と実用新案権は、管轄や活用方法などが大きく異なります。どちらの権利を活用した方が効果的なのか、専門家と相談した上で決めると良いでしょう。