商品開発時に自社のアイデアを守るための「実用新案権」とは

2022/02/25
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商品開発を行っている段階で、新たなアイデアが生まれた場合には、他社に追随されないようにアイデアを保護する必要があります。この時に使うことができる権利を「実用新案権」と言い、最初に出願した企業がアイデアを独占できるのです。実用新案権の具体的な内容について、今回の記事で理解を深めましょう。

【目次】 
1.実用新案権は「ちょっとした発明」
2.実用新案権のメリットと注意点とは
3.出願前には先行技術調査が必須
4.今回のまとめ

実用新案権は「ちょっとした発明」

実用新案権とは、物の形状・構造・組み合わせに関するアイデアを10年間保護する権利をさします。ここで言うアイデアは、高度な発明である必要はなく、日常生活での出来事などをヒントとした「ちょっとした発明」を意味しているのです。

ちょっとした発明の具体例とは?

では、 ちょっとした発明とは、具体的にどのような発明なのかを見てみましょう。これまでに実用新案権として設定登録された代表的なものは、シャチハタ株式会社の「Xスタンパー」です。現在では、シャチハタ印と言うと、スタンプ台や朱肉を使わず捺印ができるハンコとして有名ですが、開発された当時は、スタンプ内部の構造や組み合わせなどのアイデアが画期的だったのです。
その他にも、布団叩きやペットボトルキャップ、取替式のフローリングワイパー、鉛筆の形を六角形にしたり消しゴムをつけたりして使いやすくする、使用後に押しつぶせるティッシュ箱など、日用品の構造に工夫がなされた場合に、実用新案権が与えられるケースが見られます。

実用新案権のメリットと注意点とは

実用新案権の登録は、様式のチェックと保護対象であるかのチェックが行われるのみであり、要件が形式的に揃っていれば、 実質的に無審査で登録されることが特徴です。申請から登録までの時間も、早ければ1年以内とかなり短く、申請されたものはほぼ登録されると言っても過言ではありません。費用も安く、ライフサイクルが短い製品や技術に対して使われるケースが多く見られます。
注意点としては、実用新案権を申請した人が、他人に対して権利を行使したい場合は、実用新案技術評価書を特許庁から取得しないといけません。これは、平成5年の法改正で無審査となったときに、権利行使が制限されるようになったためです。実用新案権の行使後に、実用新案が無効になるようなことがあれば、親権者が損害賠償責任を負うケースも考えられるのです。このため、権利行使に慎重にならざるを得ず、出願数が減っていると言われています。

出願前には先行技術調査が必須

実用新案権が登録されたとしても、その前までに同じような技術が登録されていると、実用新案権の侵害とみなされる恐れがあります。これを防ぐために、出願前に先行技術調査を行います。調査するには、特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」を活用し、「特許・実用新案検索」のページから必要事項を入力して検索しましょう。調査が完了し、技術が重複していないことを確認したら、書類もしくはインターネットで出願しましょう。

今回のまとめ

実用新案権は、物の形状・構造・組み合わせに関するアイデアを10年間保護する「ちょっとした発明」の権利を指します。実用新案権は、取得しやすい権利ではあるものの、 行使権が制限されたり権利の存続期間が短かったりと、制約を受ける場面も多いのが実情です。 実用新案権を取った方が良いのか迷う時には、弁理士などの専門家に相談されることをおすすめします。